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2014/10/17

新国立競技場の基本設計がいつまでたっても終わらない原因についての考察Ⅰ

今回は、がっつり建築の話をしたいと思います。

一応よくわからない人が読めるレベルで書きますが、ミヤモト最大の趣味を惜しむことなく絞り出したかなり専門的な記事なので、一読の際はご注意を。できる限り画像たっぷりでお届けしますので記事がもうアレな人は画像だけ楽しんでいってください。

 

 

ミヤモト、このところ国立競技場にはまってるわけです。

旧国立競技場もいいですが、新国立競技場もいいですよね。あの、未来世界的デザイン。外苑方面からのイメージ画像が超ステキ。近代建築の建ち並ぶ夜景が超ステキ。

Photo

ちなみに新宿・千駄ヶ谷方面からのイメージもステキ。外苑がなんだか古臭く見えるけどいいの。

Photo_2

あんまりにも未来世界的なんで、それらしく発射させてみました。

Photo_3

ちなみにネットを探したら、新国立号をGoogleマップに埋め込んだ、というツワモノがいました。

こちらです。

Photo_4

 

しかしどうもあのスターシップ新国立号に納得いかないことがあります。

今回はそんな新国立競技場の、建築的(あるいは設計的)見地からみた謎をお届けします。

 

 

ことの起こりはだいぶ前。

各停をご覧の皆様ならご存知の通り、ミヤモト現在過ぎ去った日を懐かしみながらあたかもここ最近の出来事のようにアップしております。

 

えーーー

2月のことでした。

東京に大雪、降りましたよね。

ミヤモトも仕事から帰ったらアパートの廊下が雪原のようになっていて、キタキツネを呼んでみました)ドアを開けるのに大変苦労しました。

近所の簡易式カースペースは屋根が崩落してしまいました。

ちなみにこちらがその時の模様です。そろそろ秋が近付いてまいりましたがまだ微妙に暑さが残っております。涼んで下さい。

Photo_5玄関前は大雪原。

Photo_8上の階の人のビートル(旧)。ビートルは雪が積もってもかわいいですなあ。

Photo_6車止めにも雪は積もることができるのですねぇ。

画像左端の簡易カースペース(屋根)に注目してください。

Photo_7数時間後。カースペースは降り積もる雪の重みに耐えられず崩れたとさ。

そんな中、ミヤモトこんなニュースをみつけました。

 

2月の大雪なら屋根落ちる? 新国立競技場、設計見直し 
朝日新聞デジタル328

2020年東京五輪・パラリンピックの主会場に予定されている新しい国立競技場の開閉式屋根について、今年2月中旬並みの大雪が降った場合、雪の重さに耐えられず崩落するとの試算が出ていることが26日分かった。日本スポーツ振興センター(JSC)が基本設計を進めており、屋根の素材や可動部の構造などを再検討している。

開閉式屋根はコンサート利用を増やし収益を上げるため、悪天候や騒音対策で設置が決まった。普段は開けておき、コンサートや悪天候時に閉める。「頑丈な屋根でなく、雨の時にさす傘のイメージ」(文部科学省幹部)で、東京ドームの屋根と同じガラス繊維膜材を想定。設置費用は120億円、開閉にかかる電気代は1回1万円としていた。

しかし、関東各地で観測史上最大を記録した2月14~16日の大雪で、東京でも体育館やアーケードなどの屋根が崩落。新国立競技場の屋根も同程度の雪が降った場合、重さに耐えられないとの試算が設計事務所から出たという。文科省の担当者は「2月は想定外の大雪だった」として「東京ドームのように覆いっぱなしなら問題ないが、屋根の可動部に負荷がかかるとのことだった」と説明する。

建築基準法は大規模な建物について、50年に一度の大雪にも耐えられる強度を求めているが、2月の大雪を受け国土交通省は基準を見直す方針。JSCは関係法令にのっとったうえ、設置費用が増えないように見直しを進めるという。(野村周平、阿久津篤史) 

(urlhttp://www.asahi.com/articles/ASG3S61YRG3SUTQP01W.html

 

えっ?

 

何言っちゃってんの?

と、建築関係者なら皆そう思うでしょう。

思うでしょう?ハルさん。

 

というのも、通常設計実務において、設計し終わったけど、その後で雪の重みで耐えられないことが分かる
なんてことは、起きないからです。

 

なぜかというと、
設計というのはその初めに積載荷重というのを考えてから始めるから。

自動車で考えてみたらわかると思うのですが、設計をしてみたけど車が走らないことが分かった…なんて話は聞いたことないですよね。まあ走るように設計するんだから当たり前ですが。

 

料理してみたけど、食べられなかった…

 

まあ…これはあるかも知れないけれども。

 

で、雪の問題なのですが、日本は地震大国というだけでなく、多雨多雪地域でもありますから(厳密には垂直積雪量が1m以上が多雪区域。北海道なんかは当然ほぼ全域1m以上です) 、本来建物にかかる雪の重さにも初めからうるさいんです。

それなのにこの事態。なにかがおかしい。

 

積雪荷重というものは、おおまかに

d(垂直積雪量。要は積もる高さ)×ρ(積雪の単位荷重。雪深1cmごとに20N/㎡が基本だが例外あり)×μb(屋根形状係数。屋根の勾配によって設定される)×X(レベル係数。地域ごとの違いを調整する数値)

で計算します(d・ρについては各市町村ごとに定めた値を適用する)

 

早い話が『1㎡の平面に積もる雪の深さに1㎡あたりの雪の重力20Nをかけて、後は地域ごとに積もりやすさを考慮する』という計算式です。

当然これを計算しないと屋根は材質も厚さも形状も決められません。

 

つまり。


日本に建っている建築物は、基本的に地域ごとの雪量を見込んでから設計を始めているはずなんです。

これはそこらの街の工務店でも当たり前にやってることです。

 

それを普段なんにも報告してこない日本スポーツ振興センター(国立競技場の運営元。以下JSC)が急に
「想定外の積雪に遭遇せり!被害甚大なので設計の見直しを決めました!基本設計提出の遅延許可をされたし!」
みたいな感じで積極的にご報告されているのが不思議でならなかったんです。

都が定めている東京の推定積雪量は、3040cm

垂直積雪量が3040cmくらいでいいってことは、最初の積雪荷重の計算でまったく雪が滑り落ちないと仮定しても深さ1cmあたり20N=600N/㎡。

このNってやつは質量(kg)×9.8m/ss(重力加速度)なので、つまりどのくらいの体重の人が乗ってる想定かというと61.22kg。

 

昔のブリトニー先生くらい?

仮に積雪震度を23倍にしてみても、まあせいぜいデラックスな方一人分がいいとこでしょう。

Photo_9

 

大雪があったとは言っても、都が注文をつけている積雪量は変わっていない(それもどうかと思うが)

それでも設計を見直す。

・・・1㎡あたり、デブ一人も支えられない屋根だったのか?

 

と、謎がどんどん深まるばかりなので改めて新国立競技場の設計案をながめてみました。

 

すると!またまた大変なことが。

 

これが、みなさんご存知新国立競技場計画案のモデルです。

もうでっかい橋と同じ考え方でつくられているという不思議な競技場。世界初の橋梁建築としての競技場です。

Photo_10

 

JSCのサイトでは、新国立競技場に関する進捗状況(既にこの半年間まったく進捗が見られないが)が発表されています。

 

平成25年11月 新国立競技場基本設計条件案策定

http://www.jpnsport.go.jp/newstadium/Portals/0/shinchokujokyo/20131211_kihonsekkeijokenan.pdf

 

この報告書はけっこう真面目に作られており、これまでの経緯や関与している当事者をその座長名まで明記してあります。
最初から最後まで関わっているのはやはり安藤忠雄ただ一人。

同時に、設計を進めていくための必要部屋数や使用者側の要望なんかも書いてあります。そして、周辺景観についても。
いってみればこの書類が本来のコンペ募集要項となるべきものといってもいいでしょう。なので実際はこの書類が出てから初めて建築の設計を始めたということがわかります。

 

この報告書の2ページ目に「フレームワーク設計を日建設計・日本設計・梓設計・アラップジャパンの4社JVを特定し、5月31日に契約しました。」とあります。

これを聞くと普通の人は「設計」って言葉が付くから
ああ、去年の5月からなんかフレームワークとかいう設計をやってたのね。って思うでしょう。

しかし、私が建築マニアとしてこれを見て思ったのは

 

これ、一体何をやってるんだろう?

 

なんだ?「フレームワーク設計」って?

 

ということです。

「フレームワーク設計」というのはソフトウェア開発の現場では度々聞くと思うんですが、プログラム開発作業の効率化を狙って、頻出処理や基本的な必須記述をいちいち都度作らないで使い回せるようにした枠組みのことです。

建築の現場ではまず聞かない作業概念なんですよ(ミヤモトの建築知識が古すぎるだけかも知れんが)

 

その設計作業をやったと書いてあるんですね。

JSCの新国立競技場に関する進捗状況の記述には以下のように書かれていました。

「フレームワーク設計」では、ザハ・ハディド・アーキテクツのデザイン監修の下、
基本設計を行う前段階として、既に決定しているラグビーワールドカップに加え、オリンピック・パラリンピック競技大会開催を想定しつつ、ザハ・ハディド氏のデザイン案を忠実にかつスポーツ・文化の各WGから出された要望をすべて取り入れた場合の試算をおこないました。

 

…ほう。それが建築界での「フレームワーク設計」なんですね。つまりデザイン側を間に入れて、上の言ってくる要望をこなせるように試算したと。

 

…………

 

……つまりまだ建築設計してないのか!

 

『みんなの要望を集めて、まとまるかどうかを調べました』をやるために何故わざわざ日建・日本設計・梓設計を投入しているんだ?日本建築設計のトップだぞ?

しかもアラップまでもが、そんな準備作業に駆り出している。

 

そんなものはコンペの実行委員会で事前にやっておけ!

 

先生!安藤先生!!

事前にやっておけよ!!

 

何をサボッてたんだ?この人は (ちなみに安藤忠雄は大好きです)

 

しかし。コンペが終わってからそんなことを始め、しかもなお一ヶ月以上が経ってもまだこのレポートに進捗は見られない。

 

なぜなのか。

 

この基本計画に携わっているのが国内トップ集団であり、しかも構造部分はガチで世界最高の建築的頭脳が関わっている。

にも関わらず、基本計画が進まない。もしくは進められない。

 

そこまでイカレた提案なのだろうか。ザハのあの未来世界の橋は。

 

 

と思ったところで一つ。思い当ったことがありました。

ミヤモト、なんだか似た話を聞いたことがあるんです。

 

実は、シドニーのオペラハウスのときにもそんな話はあったんです。

当時、原案者ウッツォンのアホな絵は実現可能なのか、という問題が持ち上がり、いったん計画が止まりました。

確かに一見殴り書きのように見えますがウッツォン自身はしっかりした構造イメージは持っていて、試作した模型の案にも一定の合理性はあったのです。

Photo_11

Photo_12

こちら試作模型をめぐる当時の様子。

その可能性を見抜いたのが、審査員長のエーロ・サーリネン。あのチューリップチェアでおなじみのサーリネンです。

Photo_13

サーリネン先生が「イケるぜ!だいじょぶ!やろう!俺が責任持つ!」って言ったから、あの奇跡の世界遺産ができたんです。

それが今回の審査委員長安藤先生、ザハの案について「大丈夫や!やろうや!」までは元気よく言いますが「責任を持つ!」は言ってくれません。

むしろ「わしは・・・見た目のことしか・・・わからへんし・・・」と声が小さい。超歯切れ悪い。

さらに「わし構造とか・・・わからんし・・・」とか全然戦ってない感じ。超逃げ腰。

 

なんかまあ、進まないのも仕方がない。仕方がないから例のモデル図をもう一回見てみました。

Photo_14


すると・・・

 

おや?

 

ちょっとこれは・・・

 

ミヤモト、大問題発見してしまったかもしれぬ。

 

これは・・・こまったなあ・・・

今回もう書きすぎてるからなあ(←爆)

 

 

ということで、続きは次回へ。

 

 

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